先日2013年度の年間ドイツゲーム大賞が発表になりました。既に御存知の方が多いとは思いますが、今年の受賞作はA・ボザの『花火』。カードゲームとしては『ドミニオン』に続く2作目。箱のサイズとしては史上最少の「小箱サイズ」という異例の選出だっただけに、事前の予想ではなかなか挙がってこなかったタイトルだったので、受賞のアナウンスは多くのファンを驚かせたものでした。
もっとも一番驚いたのはデザイナーの
ボザ自身だったでしょうけど(笑)。
さて、ここ数年迷走が続いているとも言われている年間ドイツゲーム大賞ですが、今年の結果がやはりサプライズであったのかというと、個人的にはそれほどビックリもしてません。むしろ事前に受賞間違いなし(という噂だった)との太鼓判付きの『アウグストゥス(ノミネートの中では唯一の大箱サイズの作品)』をプレイさせていただいた際も、(う~ん、確かに悪くないけど、ちょっと大賞というにはどうなんだろ?まぁでも大箱だしなぁ・・・^^;)という感想を持っていた身としては、以前からの流れからすれば『花火』の受賞は十分あり得るケースだと思ってましたし、むしろこっちが本命じゃないかな?とすら考えておりました。
その「以前からの流れ」というのは、まぁ色々あるのですけれど、例えばシンプルな作品が好まれたり、その中で発表時から数年経った後のリメイクも十分可能性があったり(例『クアークル(2011年)』したのもあるのですけど、一番は、昔も今も「年間ボードゲーム大賞は、その時々の代表的なデザイナーを選びたがる」、もっと突っ込んでいえば「一度受賞したデザイナーにはかなりプラスの査定がある」傾向にあるという点でした。
昔なら『バルバロッサ(1988年)』からの『貴族の務め(1990年)』、『ドリュンタードリューバー(1991年)』、『カタンの開拓者(1995年)』のトイバー。『アンダーカバー(1986年)』からの『アウフ・アクセ(1987年)』、『エルグランデ(1996年)』、『ティカル(1999年)』、『トーレス(2000年)』のクラマーはまさに別格としても、ムーンやザイファルトの複数回受賞。最近ですとヴァッカリーノも『ドミニオン(2009年)』の受賞から数年後の『キングダムビルダー(2012年)』での2度目の受賞へと繋げてます。
実際今回受賞したボザも、赤ポーン(本賞)ではありませんが、2年前に新設されたばかりの黒ポーン(エキスパート部門)を『世界の七不思議』で初年度にゲットしたデザイナーということで、審査員たちの間では「彼の作品なら間違いないだろう」みたいな事前の信頼感みたいなものは少なからずあったのではないかと想像してます。
この「同一デザイナーに複数回賞を与える」という傾向。一番の理由は「単なる偶然」なのかもしれませんけど、やはりそこには「ビジネス(あるいはより多くの人への周知)という面で有利」という部分は否めないでしょう。できうるかぎり多くの方に作品を手に取って欲しい=この賞の存在を知って欲しいでしょうから、これは素晴らしい手法であるとすらいえます。
なぜなら一度作品を遊んでみて、もしその作品に興味を持ってもらえたなら、まず真っ先にカスタマーは「同じデザイナーの次(あるいは以前)の作品も面白いのかな?」という思考になるでしょうから、更なるビジネスチャンスもここで生まれてきます。まさに、同一デザイナーに賞を与えることに関しては、かなりのメリット効果があるといえるのではないでしょうか。
さて、それではここでせっかくですので、少し『花火』という作品自体についても説明させていただきたいと思います。
この作品はもともと2010年くらいに『花火&生け花』という名で、フランスの12頭のサル社という小メーカから発表されてました。当時は一部でその独特の世界観やプレイ感が話題にはなってましたが、さほど大きな盛り上がりもないまま、しかしそれ以降もメーカーが変わりながら何度かリメイクされ(その過程で『花火』が独立)、ジワリジワリと地味ながら確実にプレイ人口を増やしていった作品でもあったのです。
中身は「推理型協力ゲーム」という今までにない新しい作風で、他のプレイヤーの手札は見えるんだけど、自分の手札だけは見れないという制約の中で、上手くお互いにヒントを出し合いながら、カードを決められた順番どおりにプレイしていこうというものです。
作品の源流が同じく「推理型」の作品の歴史的名作『ドメモ』にあることは明白なのですが、あちらが「対戦形式」であるのに対して、こちらは「協力型」というのが全くの正反対・好対照の作品に仕上がってまして、そのコロンブスの卵的発想の展開が、ボザというデザイナーの素晴らしい着眼点&アイデアだったと思います。
またその難易度も、完全に勝利を目指そうと思うとなると結構なハードさで、単純に失敗も受け入れながらのワイワイプレイの楽しさもあれば、ウンウン悩みながらのガチンコの真剣勝負も楽しめるというバランスの良さは、本当に(ルールは至ってシンプルでありながらも)細かいところまで良くできた作品だと思います。
最初は「コレ親子とかでも上手く遊べんのかな?」という疑問が頭をよぎったりもしたのですが、実際にはパパとママで子供さんに多少のヒントを出してあげながら、上手くプレイできたら褒めてあげたり、また言葉にはできないコミュニケーション(捨ててはいけないカードに手をかけたら変な顔をするとかw)で盛り上がったりとか、色々なシチュエーションが想像できたので、たぶん大丈夫なんでしょう^^;
余談ですが、この作品では厳密なルールのもと、プレイヤー間の情報の公開はかなり限定されるのですが、実際その辺をどこまで許容するかは自由に(その時の卓の面子で)決めれば良いものだと思ってます。ですから、初心者や年少のプレイヤーが入る際には、前述の親子の例みたいに通常ではありえないヒントの出し方をしても、仮にその方がゲームとして盛り上がるのであれば、まさしくそれが正解だといえるでしょう(もちろん私たちはいつもガチでプレイしますけどねw)。
最後にこの作品の唯一の問題点として挙げられるのが「カードスタンドがほぼ必須」ということです。もちろん手に持ってやれないことはありませんけど、著しくプレイアビリティが悪そうです。運良く私は先日知り合いの方から自家製のカードスタンドを譲っていただいたのですが、これがあるおかげで、一緒に遊んでいただいた方にはかなりの確率で高評価をいただけるようになりました(また同時に「この作品凄く面白くて欲しいんだけど、このカードスタンドが無いとやっぱりやだなぁ~」という意見も多くもらってます)。
一番手っ取り早いのは、カードスタンドが付属で付いてくるような作品を購入してそれを流用するパターンでしょうか。『メモワール'44』、『乗車券アジア』、『10DAYS~シリーズ』などが代表格ですね(もっと他にもたくさんあると思いますけど)。どうせならせっかく大賞を受賞したのですし、また何度もリメイクされているのですから、カードスタンド付きで(それこそ大箱でw)売り出せばよいのに・・・とすら思います^^;
ということで、色々とファンをビックリさせた『花火』の受賞アナウンスでしたけど、個人的には『クアークル(2011年)』のときよりかは何倍も好意的に受け止めています(爆)。じゃあこれが良くてなんで『6ニムト』はダメだったんだよとか、まだまだ突っ込みどころもあるかもしれませんけど(笑)、是非『花火』に関しては機会があれば遊んでみて欲しい作品です。byタカハシ
もっとも一番驚いたのはデザイナーの
ボザ自身だったでしょうけど(笑)。
さて、ここ数年迷走が続いているとも言われている年間ドイツゲーム大賞ですが、今年の結果がやはりサプライズであったのかというと、個人的にはそれほどビックリもしてません。むしろ事前に受賞間違いなし(という噂だった)との太鼓判付きの『アウグストゥス(ノミネートの中では唯一の大箱サイズの作品)』をプレイさせていただいた際も、(う~ん、確かに悪くないけど、ちょっと大賞というにはどうなんだろ?まぁでも大箱だしなぁ・・・^^;)という感想を持っていた身としては、以前からの流れからすれば『花火』の受賞は十分あり得るケースだと思ってましたし、むしろこっちが本命じゃないかな?とすら考えておりました。
その「以前からの流れ」というのは、まぁ色々あるのですけれど、例えばシンプルな作品が好まれたり、その中で発表時から数年経った後のリメイクも十分可能性があったり(例『クアークル(2011年)』したのもあるのですけど、一番は、昔も今も「年間ボードゲーム大賞は、その時々の代表的なデザイナーを選びたがる」、もっと突っ込んでいえば「一度受賞したデザイナーにはかなりプラスの査定がある」傾向にあるという点でした。
昔なら『バルバロッサ(1988年)』からの『貴族の務め(1990年)』、『ドリュンタードリューバー(1991年)』、『カタンの開拓者(1995年)』のトイバー。『アンダーカバー(1986年)』からの『アウフ・アクセ(1987年)』、『エルグランデ(1996年)』、『ティカル(1999年)』、『トーレス(2000年)』のクラマーはまさに別格としても、ムーンやザイファルトの複数回受賞。最近ですとヴァッカリーノも『ドミニオン(2009年)』の受賞から数年後の『キングダムビルダー(2012年)』での2度目の受賞へと繋げてます。
実際今回受賞したボザも、赤ポーン(本賞)ではありませんが、2年前に新設されたばかりの黒ポーン(エキスパート部門)を『世界の七不思議』で初年度にゲットしたデザイナーということで、審査員たちの間では「彼の作品なら間違いないだろう」みたいな事前の信頼感みたいなものは少なからずあったのではないかと想像してます。
この「同一デザイナーに複数回賞を与える」という傾向。一番の理由は「単なる偶然」なのかもしれませんけど、やはりそこには「ビジネス(あるいはより多くの人への周知)という面で有利」という部分は否めないでしょう。できうるかぎり多くの方に作品を手に取って欲しい=この賞の存在を知って欲しいでしょうから、これは素晴らしい手法であるとすらいえます。
なぜなら一度作品を遊んでみて、もしその作品に興味を持ってもらえたなら、まず真っ先にカスタマーは「同じデザイナーの次(あるいは以前)の作品も面白いのかな?」という思考になるでしょうから、更なるビジネスチャンスもここで生まれてきます。まさに、同一デザイナーに賞を与えることに関しては、かなりのメリット効果があるといえるのではないでしょうか。
さて、それではここでせっかくですので、少し『花火』という作品自体についても説明させていただきたいと思います。
この作品はもともと2010年くらいに『花火&生け花』という名で、フランスの12頭のサル社という小メーカから発表されてました。当時は一部でその独特の世界観やプレイ感が話題にはなってましたが、さほど大きな盛り上がりもないまま、しかしそれ以降もメーカーが変わりながら何度かリメイクされ(その過程で『花火』が独立)、ジワリジワリと地味ながら確実にプレイ人口を増やしていった作品でもあったのです。
中身は「推理型協力ゲーム」という今までにない新しい作風で、他のプレイヤーの手札は見えるんだけど、自分の手札だけは見れないという制約の中で、上手くお互いにヒントを出し合いながら、カードを決められた順番どおりにプレイしていこうというものです。
作品の源流が同じく「推理型」の作品の歴史的名作『ドメモ』にあることは明白なのですが、あちらが「対戦形式」であるのに対して、こちらは「協力型」というのが全くの正反対・好対照の作品に仕上がってまして、そのコロンブスの卵的発想の展開が、ボザというデザイナーの素晴らしい着眼点&アイデアだったと思います。
またその難易度も、完全に勝利を目指そうと思うとなると結構なハードさで、単純に失敗も受け入れながらのワイワイプレイの楽しさもあれば、ウンウン悩みながらのガチンコの真剣勝負も楽しめるというバランスの良さは、本当に(ルールは至ってシンプルでありながらも)細かいところまで良くできた作品だと思います。
最初は「コレ親子とかでも上手く遊べんのかな?」という疑問が頭をよぎったりもしたのですが、実際にはパパとママで子供さんに多少のヒントを出してあげながら、上手くプレイできたら褒めてあげたり、また言葉にはできないコミュニケーション(捨ててはいけないカードに手をかけたら変な顔をするとかw)で盛り上がったりとか、色々なシチュエーションが想像できたので、たぶん大丈夫なんでしょう^^;
余談ですが、この作品では厳密なルールのもと、プレイヤー間の情報の公開はかなり限定されるのですが、実際その辺をどこまで許容するかは自由に(その時の卓の面子で)決めれば良いものだと思ってます。ですから、初心者や年少のプレイヤーが入る際には、前述の親子の例みたいに通常ではありえないヒントの出し方をしても、仮にその方がゲームとして盛り上がるのであれば、まさしくそれが正解だといえるでしょう(もちろん私たちはいつもガチでプレイしますけどねw)。
最後にこの作品の唯一の問題点として挙げられるのが「カードスタンドがほぼ必須」ということです。もちろん手に持ってやれないことはありませんけど、著しくプレイアビリティが悪そうです。運良く私は先日知り合いの方から自家製のカードスタンドを譲っていただいたのですが、これがあるおかげで、一緒に遊んでいただいた方にはかなりの確率で高評価をいただけるようになりました(また同時に「この作品凄く面白くて欲しいんだけど、このカードスタンドが無いとやっぱりやだなぁ~」という意見も多くもらってます)。
一番手っ取り早いのは、カードスタンドが付属で付いてくるような作品を購入してそれを流用するパターンでしょうか。『メモワール'44』、『乗車券アジア』、『10DAYS~シリーズ』などが代表格ですね(もっと他にもたくさんあると思いますけど)。どうせならせっかく大賞を受賞したのですし、また何度もリメイクされているのですから、カードスタンド付きで(それこそ大箱でw)売り出せばよいのに・・・とすら思います^^;
ということで、色々とファンをビックリさせた『花火』の受賞アナウンスでしたけど、個人的には『クアークル(2011年)』のときよりかは何倍も好意的に受け止めています(爆)。じゃあこれが良くてなんで『6ニムト』はダメだったんだよとか、まだまだ突っ込みどころもあるかもしれませんけど(笑)、是非『花火』に関しては機会があれば遊んでみて欲しい作品です。byタカハシ